類似点

語順が基本的にSVO

中国語・英語ともに共通して基本的には語順はSVO形である。この語順は基本的な大原則であり、ロマンス諸語などと比較して、中国語も英語も文法上SVO形が通常の平叙文であり、それは原則としてOVS形やOSV形を想定した文構造ではない。ただし、英語と比べると中国語では、O〔目的語〕を強調する場合にはOSVという形はありうる。

彼はまじめに科学を勉強する
He studies science earnestly.
He earnestly studies science.
他認真地學習科學。
科學、他認真地學習。(この場合、「科学(という教科)を、彼がまじめに勉強している」というようなニュアンスになる)
×他學習科學認真地。

中国語には一般的に多用される例外としてSOV形があり、基本的にはSVO形とは意味は大きく変わらない。中国語は伝統的にSVO形ではあったが、歴史的にSOV形である元朝のモンゴル語(モンゴル語族)や清朝の満洲語(ツングース語族)などの影響をかつて受けた関係もあって、本来の中国語ではあり得なかったSOV形が存在している。一方で現代英語は語順にかなり厳格であり、ほぼSVO形しか認められないような文法となっている。とはいえ、450年~1150年頃にイングランドで使われていた古英語では現在のロマンス諸語のように語順が比較的自由だったとされ、SOV形が許容されていただけでなく、OSV形・VOS形・OVS形・VSO系も存在していた。

私は私の首にマフラーを巻いている
I wear winter scarf on my neck.
我在我的脖子上圍著圍巾。
我在我的脖子上把圍巾圍著。
圍巾、我在我的脖子上圍著。(この場合、「マフラーを私は首に巻いている」というようにマフラーを強調したニュアンスとなる)

また、類似した用法として、SVC(主語+動詞+補語)の形において、中国語では「到〇〇去」というように「SCV」となり得るパターンも存在する。「到」と同じ用法の語として「往」や「赴」などもある。

彼は上海に行く
I go to Shanghai.
我去上海。
我到上海去。
上海、我去。(この場合、「上海に、私は行く」と場所としての上海を強調しているニュアンスとなる)

やや似た特殊な文法構造としてSVOVが中国語にはあるが、かなり限定的な用法であり、やや命令口調の印象を与える。

教えてやる / よく聞いておけ(私は言ってあなたに聞かせる)
Listen! I tell you.
我說給你聽。

ただし、動詞を修飾する副詞および副詞節の位置については異なる。英語では副詞は文中での置く位置を比較的フレキシブルに決めることができるが(場所や時間を示す副詞節は基本的に文末もしくは文頭)、中国語では原則として副詞・副詞節ともに動詞の前に置かなければならない。

彼女は台所で食事を作る
She cooks at the kitchen.
At the kitchen, she cooks.
×She at the kitchen cooks
她在廚房做菜
在廚房、她做菜。
她做菜在廚房。(この語順だと、「彼女が料理をするのは台所である」というニュアンスが強い)

彼はあの図書館で本を読む
He reads a book in that library.
他在那圖書館看書。
×He in that library reads a book.
他看書在那圖書館。(この語順だと、「彼が本を読むのは図書館である」というニュアンスが強い)

あの女の子は毎朝7時に起きる
That girl gets up at 7 o’clock every morning.
那個女孩子每天早上七點起床。
×That girl at 7 o’clock every morning gets up.
那個女孩子起床每天早上七點。(この語順だと、「あの女の子が起床するのは毎朝7時である」というニュアンスが強い)

また、英語には「There is (are)」のthere構文に代表されるような「there+V+O」で構成される存在文があり(SVの第一文型と同じ)、

テーブルの上に1冊の本がある
There is a book on the table.
桌子上有一本書
一本書在桌子上。

というようになる。中国語では主語が「テーブル」か「本」かの違いによって同じ文脈を示せる。ただし、英語はthere構文では「there is my book on the table」「There is the book on the table 」のように定冠詞や人称名詞所有格で示す限定詞が伴う場合には正しい文法とは言えないが、中国語では限定詞が伴われていても問題はない。

テーブルの上に私の本がある
×There is my book on the table.
桌子上有我的書。
我的書在桌子上。

主語が省略できない

中国語・英語ともに日本語やフランス語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語に代表されるロマンス諸語とは異なり、主語を省略できない。ロマンス諸語では動詞が主語の人称によって変化するという性質上、主語を省略しても動詞の活用から主語が誰かを類推することができるためである。

あなたはあのテレビ番組を見る
You watch the TV program.
你看那個電視節目。
Watch the TV program.(この場合は命令形となり、主語がYouである上記の英文とは同じとは言えない)
看那個電視節目。(英語同様に命令形となってしまい、主語が你である上記の中国語の文と同じとは言えない)

命令形が動詞の原形

中国語も英語も命令形が、基本的に動詞の原形のみ、もしくは動詞の原形に副詞や前置詞(中国語では方向補語)を付加した形となる。ただし、中国語では動詞単体で命令形にするよりは、副詞や方向補語を伴う、もしく目的語を付加することで動詞により具体性を帯びさせることが多い。中国語の動詞は単音=漢字1文字もしくは二音節=漢字2文字がほとんどだが、動詞1文字ないしは2文字だけの命令形では文語的な印象が強い。

あの絵を見てごらんなさい
Look at the picture.
看看那張畫兒。
看一下那張畫兒 。
看那張畫兒。(上記中国語の文2例と比較して、聞き手に対してやや口調が強めの印象を与える)
你看、那張畫兒。

文法的性がない

印欧語に見られる名詞の男性名詞・女性名詞・中性名詞といった文法的性(gender)の概念がないため、名詞とその関連語(多くは形容詞)の変化する現象(「性の一致」)が中国語にも英語にも存在しない。
性については、三人称で「他」「她」を使い、二人称で台湾などで女性に対して「妳」を使う、など文字上で使い分けることがあるのみで中国語には基本的にはその概念がないと言って差し支えない。「他」「她」はいずれも「Tā」と発音し、「你」「妳」はいずれも「Nǐ」と発音しているため、中国語は文法的性を意識した言語とは言いきれない。

白い山
white mountain
白色的山
白山
※スペイン語では「montaña blanca」というように「montaña(山)」が女性名詞であるために、「山」を修飾する形容詞「白い」も女性系の「blanca」となる。反対に名詞が「libro(本)」のように男性名詞であれば、これを修飾する形容詞「白い」は男性系の「blanco」となり、「libro blanco」という形になる。

文法的数がない

文法的性と同様に名詞が単数か複数かの文法的数(number)によって、名詞にかかる形容詞や動詞などになんら影響を与えることはない。

私の親切な友人たち
my kind friends
我親切的朋友們(もしくは我親切的朋友)。
※スペイン語では「Mis amigos simpáticos」(男性の友人)もしくは「Mis amigas simpáticas」(女性の友人)となり、もし単数であれば「Mi amigo simpático」もしくは「Mi amiga simpática」となる。

ただし、形容詞で修飾された名詞が主語となる場合は中国語では単数・複数による違いはないものの、英語の場合は主語が単数・複数かで動詞の活用も変化する。同様にスペイン語でも動詞の活用が変わる。

一方で名詞が単数か複数かについては、中国語と英語では取り扱い方が異なるので注意が必要である。

修飾語となる形容詞は必ず被修飾語の前に置く

中国語・英語ともに修飾する形容詞・形容詞句・名詞と被修飾となる名詞の語順は必ず「修飾語+被修飾語」となり、スペイン語に代表されるロマンス諸語のような「名詞+形容詞(被修飾語+修飾語)」という形にはならない。

小さな男の子
a little boy
(一個)小男孩
※スペイン語ではun niño pequeño(複数形ではuns niños pequeños)となる。

ただし、古代中国語では「帝舜」「后羿」「婦好」のように被修飾語+修飾語の構造があったとされるが、現在の中国語ではそのような語順は存在しない。現代の広東語では被修飾語+修飾語となる名詞+形容詞の例もある(もちろん、形容詞+名詞と修飾成分が前置するのが通常)。

  • 椰青(je4 ceng1) ⇒ ヤングココナッツ。中国語であれば「青椰(qīng yē)」。
  • 雞公(gai1 gung1) ⇒ オスの鶏、おんどり。中国語では「公雞(gōng jī)」。
  • 豆腐潤(dau6 fu6 jeon6-2) ⇒ 豆腐の一種、豆膶とも呼ぶ。中国語であれば「潤豆腐(rùn dòufu)」、ただし中国や台湾では一般的に「豆腐乾(dòufu gān)」。
  • 晨早(san4 zou2) ⇒ 早朝。中国語では「早晨(zǎochén)」。
  • 人客(jan4 haak3) ⇒ 客、ゲスト。中国語では「客人(kèrén)」。

孤立語である、もしくは孤立語的要素が強い

膠着語(日本語・朝鮮語・トルコ語・フィンランド語・ハンガリー語)や屈折語(ラテン語・古典ギリシア語・ドイツ語・ロシア語・アラビア語)という言語類型に対して、中国語は孤立語として扱われる。
孤立語は1語が1形態素(意味)に対応する言語であり、時制・格・文法的数によって語形が変化することなく、主語・目的語の区別は語順によって文意が示される。孤立語にはこの他にベトナム語・タイ語・クメール語・ラオス語などがある。
一方で、英語は元々はドイツ語・フランス語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語・ロシア語同様に屈折語と定義される印欧語に属するものの、法(直接法=現実世界の事実を述べる、命令法=命令・要求を述べる、仮定法=仮定を述べる、可能法=可能なことを述べる、希求法=願望・希望の述べる、など話し手の心的状態を示す)は法助動詞(shall、should、can、could、will、would、must、may、might、need、dare)によって表すことができ、主語と目的語の違いは語順で示されるなど孤立語的な要素があり、かつ動詞の屈折語尾がほとんど失われているほか(三人称現在形の動詞語尾に「-s」がつくのみ)、前置詞で格を表わしたりと膠着語的な性格も有している。

格変化がない

語形を変えることによって、ひとつの動作における動作主と対象の関係性(主語と目的語・補語)や、場所・所有を示す文法的機能を格と呼び、格が必要に応じて形を変えることを格変化と呼ぶ。

例えば、日本語の「私は公園で私の犬にボールを投げる」といった文では、
「私は」⇒ 「私+は」(動作主を示す主語、主格)
「公園で」⇒ 「公園+で」(場所を示す補語、処格)
「私の」⇒ 「私+の」(所有を示す、属格)
「犬に」⇒ 「犬+に」(動作の対象を示す補語、与格)
「ボールを」⇒ 「ボール+を」(動作の対象を示す目的語、対格)
というように助詞を使い分けて格変化を機能させることによって、文脈での意味関係を示すことができる。

上記の例文は英語と中国語では以下のようになる。
I throw a ball to my dog at the park.
我在公園裡把一個球投給我的狗。

英語においては「I」や「my」などの人称代名詞の変化で代名詞の文における役割を明示するほか、前置詞「to」「at」を用いることによって動作の対象や動作が行われる場所を示すことができる。ロマンス諸語ではその祖語となったラテン語と比較すると格変化が消失していった一方で、英語と同じゲルマン語派に属するドイツ語や同じく印欧語のスラブ語派のロシア語では格変化が依然存在している。

ただし、古代中国語にも格があったとされ、一人称であれば主格(I)や属格(my)は「我」、与格や対格は「吾」というように厳密な使い分けは存在していたとされる。同様に二人称では主格(you)と属格(your)は「汝」で、与格と対格は「爾」であったという。現代中国語および中国の各方言ではこのような機能はすでに失われているが、客家語や湘語には残っている。

相違点

品詞の区分

英語では単語は名詞(noun)・代名詞(pronoun)・動詞(verb)・形容詞(adjective)・副詞(adverb)・前置詞(preposition)・助動詞(auxiliary verb)・冠詞(article)・間投詞(interjection)・接続詞(conjunction)に分類され、文法と語順にしたがって文中で適切に配置され、文の意味を形成する。

中国語では品詞は最小単位が単語(=「)であり、これは独立して運用できるものである。意味と働きに応じて、「実詞」と「虚詞」に分けることができる。実詞とは事物・動作・性質など実際の意味を持った単語であり、名詞・動詞・形容詞などが含まれる。虚詞は実際の意味を持たず、様々な文法関係を表すもので、助詞・介詞・連詞・擬音語・感嘆詞などが含まれる。

更に実詞の下位区分として、体詞と述詞(謂詞)がある。日本語で言うと、体詞は体言に、述詞は用言に相当する。体詞には名詞・代名詞・数量詞があり、述詞には動詞・形容詞がある。体詞・述詞どちらにも属すとも考えにくい副詞がある。

時制の厳密さ

英語では時制は大きく過去形・現在形・未来形と3種類に分類され、時制に合わせて動詞を活用する必要がある。ロマンス諸語はじめ印欧語ではこれが更に複雑化し、人称に合わせてさらに細分化された動詞の活用を適切に使い分けなければならない。

一方で中国語では時制の観念がやや稀薄であり、時間を示す副詞や副詞句を用いることでどの時点の出来事を示すしくみになっている。

〔過去形〕
I watched a movie yesterday.
我昨天看電影。
我昨天看了電影。
我昨天看了電影了。

I was watching a movie yesterday.
我昨天在看電影
⇒過去進行形で「~していた」というニュアンスになる)

I watched a movie yesterday.
我昨天看過電影。
我昨天看過了電影。
我昨天看過了電影了。
⇒「過」は現在完了形や過去完了形を示すものであるが、単純に過去形としても使用できる。

〔現在形〕
I watch a movie.
我現在看電影。

I am watching a movie now.
我現在正在看電影。
我現在在看電影。
我現在看著電影。
我現在正在看著電影
我現在在看著電影。
⇒「正在」「在」「著」を用いることによって現在進行形を示すことができる。 

〔未来形〕
I will watch a movie.
I am going to watch a movie.
I plan to watch a movie.
我明天看電影。
我明天會看電影。
我明天要看電影。
我明天準備看電影。
我明天打算看電影。

動詞の使い方

自動詞・他動詞の区分

中国語では動詞は日本語動詞のように「~る」(もしくは「~する」)のような語尾で終わることがないことから意味と機能によって動詞か否かを識別することが求められる。

また、中国語では目的語が取れるかどうかで、動詞を「及物動詞」や「不及物動詞」の二種類に大きく分けることができる。「及物動詞」では目的語を取ることができ、「不及物動詞」ではそれができない。日本語の「始まる」と「始める」や、「壊れる」や「壊す」というような自動詞や他動詞の明確な区分が中国にはないために、「比賽開始」「開始比賽」や、「集合學生」「學生集合」のように語順による位置で動詞の機能を区別する。

英語では動詞は目的語を伴わない自動詞(intransitive verb)と目的語を伴って主語から目的語への動作や影響を示す他動詞(transitive verb)の二種類に二分できる。これに対して中国語では動詞を英語のように自動詞と他動詞と単純に区別することが難しい。
例えば、「6人の女性が来た」という文であれば、

六個女生來了。
來了六個女生。

というような文章を作ることが可能である。前者は主語が目的語を取らない自動詞と受け取れるが、後者は一見すると他動詞+目的語という構造とも解釈できるものの、両者は全く同じ意味であるために「」は自動ではないとは言いきれなくなり、一概にひとつの動詞が自動詞・他動詞と安直に割り切れないケースが存在する。

同様に「下雨」という語についても、構造的に他動詞+目的語とも取れなくないが、「」を主語とした主語+自動詞とも言える。この他、そもそも本来あるべき「」という語が省略されているのではという解釈もあり、「天下雨」という語形であれば、主語+他動詞+目的語という構造であるとも言える一方で、この文形は補語+自動詞+主語とも解釈可能である。

動詞の活用の有無

 

単数・複数の違い

 

疑問文の文型

 

量詞の有無