台湾原住民のあらまし

台湾島は日本の九州とほぼ同じ大きさながらも(台湾=約36,200km²、九州=約36,780km²)、台湾には文化面・言語面ともに多種多様な原住民が16世紀の漢民族の移住よりも以前に住んでおり、彼らはオーストロネシア語系の民族に属する。

16世紀に台湾島に移住し始めた漢民族は当時平原地域に住んでいた原住民を「平埔番」や「熟番」と呼び、一方で山地周辺に住んだ原住民を「高山番」や「生番」と呼んでいた。日本統治時代になると「平埔番」は「平埔族」、「高山番」は「高砂族」と呼ばれるようになった。「高砂族」については戦後に中華民国政府から「高山族」「山地同胞」「山地人」と呼ばれるようになる。
彼らの中には独自の文化や言語を漢民族のものに同化していったものもあれば(特に平埔族)、現在もなお言語や文化を保存しているものもあります。

16世紀以降、台湾が常に外来政権によって支配されてきたことは原住民にとっても例外ではなく、日本の植民地時代には日本の国民として、戦後は中華民国の国民として扱われており、特に戦後においては原住民のアイデンティティーは重要視されず、むしろ漢民族系との同化政策が強く推し進められてきた。

しかし、1980年代後半の民主化運動の流れの中で原住民の権利も声高に唱えられるようになり、同化政策の変更を迫ったばかりではなく、法的な呼称や原住民籍の設定といった原住民の地位向上に成功する。1996年に原住民を管轄する原住民族委員会が設置されて以来、2005年には原住民基本法が制定されただけでなく、原住民の国営テレビ局も開設されるようになった。

ただし、原住民は現在全てが政府認定されたものというわけではない。下記のように政府認定された民族、政府非公認ながらも各市政府(地方自治体)によって認定されている民族、政府認定されていない民族というように大別することができる。

政府認定されている民族(16民族)

Taiwanese indigenous peoples

族名 漢字名 英語表記 人口 居住地域
タイヤル語群 タイヤル族 泰雅族 Atayal 約92,235人 台北市、新北市、桃園市など
タロコ族 太魯閣族 Taroko 約22,000人 花蓮県秀林郷、卓渓郷
セデック族 賽德克族 Seediq 推定5,500~6,000人 南投県、花蓮県
パイワン語群 アミ族 阿美族 Amis 約214,000人 花蓮県、台東県、屏東県など
パイワン族 排灣族 Paiwan 約103,000人 屏東県、台東県
ブヌン族 布農族 Bunun 約59,447人 南投県、花蓮県、台東県
プユマ族 卑南族 Puyuma 約15,562人 台東県
サイシャット族 賽夏族 Saisiyat 約6,769人 新竹県、苗栗県
サオ族 邵族 Thao 約829人 南投県魚池郷、水里郷
クバラン族 噶瑪蘭族 Kavalan 約1,564人 宜蘭県、花蓮県、台東県
サキザヤ族 撒奇莱雅族 Sakizaya 推定5,000~10,000人 花蓮県
ツォウ語群 ツォウ族 鄒族 Tsou 推定5,000~10,000人 嘉義県阿里山郷
カナカナブ族 卡那卡那富族 Kanakanavu 約6,710人 高雄市那瑪夏区
サアロア族 拉阿魯哇族 Saaroa 約442人 高雄市桃源区、那瑪夏区
ルカイ語群 ルカイ族 魯凱族 Rukai 約11,911人 高雄市、屏東県、台東県
バタニック語群 タオ族 達悟族 Tao 約4,700人 蘭嶼郷

政府非認定だが地方自治体によって認定されている民族(2民族)

族名 漢字名 英語表記 人口 居住地域
パイワン語群 シラヤ族 西拉雅族 Siraya 約10,000人 台南市
マカタオ族 馬卡道族 Makatto 約1,800人
高雄市、屏東県
タイボアン族 大満族、大武壠族 Taivuan 約20,000人 台南市、高雄市、花蓮県など

※シラヤ族は2005年に台南市より原住民認定、マカタオ族は2013年に花蓮県富里郷および2016年に屏東県より原住民認定、タイボアン族は2013年に花蓮県富里郷によって原住民認定されている。

政府に認定されていない民族

族名 漢字名 英語表記 人口 居住地域
平埔族 ケタガラン族 凱達格蘭族 Ketagalan 新北市、台北市、基隆市など
クーロン族 龜崙族 Kulon 桃園市、新北市
バサイ族 巴賽族 Basay 約1,000人以上 台北市、基隆市、新北市など
トルビアワン族 哆囉美遠族 Torobiawan 宜蘭県
タオカス族 道卡斯族 Taokas 桃園市、新竹県、苗栗県など
パゼッヘ族 巴則海族 Pazeh 約5,000人 台中市、南投県、苗栗県
パポラ族 巴布拉族 Papora 台中市、南投県
バブザ族 巴布薩族 Babuza 彰化県
ホアンヤ族 洪雅族 Hoanya 約1,000人 台中市、彰化県、南投県など
アリクン族 阿立昆族 Arikun 台中市、彰化県、南投県など
ロア族 羅亞族 Lloa 雲林県、嘉義県など
カハブ族 卡哈布族 Kaxabu 約600人 台中市、南投県

原住民の言語(台湾諸語)一覧

台湾原住民の言語は死語となってしまったものを含めて、以下のように分類することができる。

台湾南島語 アタヤル語群 タイヤル語
セデック語
タロコ語
寒溪語(セデック族の一部で用いられるクレオール語)
パイワン語群 北台湾南島語族 ルイラン語
クーロン語
サイシャット語
パゼッヘ語
カハブ語
サオ語 (ほぼ死語)
ホアンヤ語
ロア語 (死語)
アリクン語 (死語)
パポラ語 (死語)
バブザ語
ファボラン語
タオカス語
東台湾南島語族 バサイ語 (死語)
ケタガラン語 (死語)
クバラン語 (ほぼ死語)
カウカット語
サキザヤ語
アミ語
シラヤ語 (死語)
タイボアン語
マカット語
南台湾南島語族 パイワン語
ブヌン語
プユマ語
ルカイ・ツォウ語群 ルカイ語
北ツォウ語群 ツォウ語
南ツォウ語群 カナカナブ語
サアロア語
マレー・ポリネシア語 バタニック語群 ヤミ語(タオ語)