四声

中国語は「トーンランゲージ(tone language)」と呼ばれているように、音の抑揚によって意味が全く異なる特徴がある。例えば、「ma(マー)」という1音についても音の抑揚で意味が変化する。

 媽 mā (第一声=陰平声) ⇒ お母さん 
 麻 má (第二声=陽平声) ⇒ 麻
 馬 mǎ (第三声=上声) ⇒ 馬
 罵 mà (第四声=去声) ⇒ 叱る、馬鹿にする

このように基本的に4つの音の抑揚が中国語の発音の元素となっており、これを四声と呼び、ピンインの上に声調符号をつけて声調の識別する。

ただし、厳密に言うと4つの音以外に抑揚をつけず軽く発音する軽声があり、実質的に5つの音が存在する。

 嗎 ma (軽声)

軽声はピンインでは声調符号はつけないが、注音符号では「˙」をつけて軽声を表す。

声調変化

中国語は原則的に四声に基づき発音されるが、以下のような現象が起きると声調が変化する。これを声調変化と呼ぶ。

「第三声+第三声」の「第二声+第三声」への変化

第三声が二重で続く場合、最初の第三声が第二声へと変化する。

【例】我買(私は買います) Wǒ mǎi ⇒ Wó mǎi

ただし、ピンインも注音符号も表記の上では第三声+第三声のままとなる。

第三声が三重に続く場合は、2音節の言葉+1音節の言葉のときは第二声+第二声+第三声となり、1音節の言葉+2音節の言葉のときは、第三声+第二声+第三声というように声調変化が起こる。

【例】冷水澡(冷水シャワー) lěngshuǐ / zǎo ⇒ léngshuí / zǎo
   母老虎(メスのトラ) mǔ / lǎohǔ ⇒ mǔ / láohǔ

第三声が3つ以上連続する場合には話す速度にもよるが、もっとも早い場合だと最後のみを第三声で発音し、前の第三声はすべて第二声に変化する。

【例】我買兩種筆(私は2種類のペンを買う)
   Wǒ mǎi liǎng zhǒng bǐ ⇒ Wó mái liáng zhóng bǐ

「不(bù)」の変調

第四声から第二声への変化

打ち消しの助動詞「不(bù)」が第四声の前にあると、第二声(bú)へと変化する。

【例】他不去(彼は行きません) Tā bù qù ⇒ Tā bú qù

軽声化

語の中で接中辞として用いられる時や反復疑問文をつくるときは「不」は軽声化される。

【例】差不多(chàbuduō) 去不去(qù bu qù)

これもピンインも注音符号も表記の上では第二声+第三声のままとなる。

「一(yī)」の声調変化

単独で発音するとき・序数を数えるときを除き、数量を数えるときには後続の声調が第一声・第二声・第三声の場合は「一」の発音が第四声の「yì」となります。後続の声調が第四声・軽声の場合は、第二声の「yí」となる。

【例】一隻貓(一匹の猫)yī zhǐ māo ⇒ yì zhǐ māo

「十」の軽声化

「十(shí)」を用いて「二十」以上の二桁の数字を表したい場合、「十」は軽声化されて「shi」となる。

【例】三十五個人(三十五人) sānshíwǔ ge rén ⇒ sānshiwǔ ge rén

   これもピンインも注音符号も表記の上では第二声のままとなる。

軽声化

一部の漢字は下記のような規則に従い、軽声化される。

  1. 「嗎」「吧」「了」「啊」のような語気助詞。
  2. 「的」「得」「地」「了」「著」「過」のような構造助詞やアスペクト助詞。
  3. 名詞の接尾辞「子」「兒」「頭」「們」
     【例】桌子 這兒 石頭 孩子們
  4. 両氏の「個」
  5. 方位詞や方位形態素
    【例】屋裡 桌上 地下 那邊
  6. 趨向を表す動詞
    【例】回來 出去 跑出來 走下去 站起來
  7. 動詞の重ね型の末尾音節
    【例】看看 說說 走走 寫寫
  8. 目的語になった人称名詞
    【例】打他 找我 請你
  9. 形容詞重ね型の軽声化
    重ね型(AABB型・AAB型)で表現される形容詞の後半部分はもとの声調にかかわらず、すべて第1声になる。
    【例】好好兒的(hǎo hāor de) 漂漂亮亮(piào piao liāng liāng) 暖洋洋(nuǎn yāng yāng)