ボポモフォ(注音符号)とは

ボポモフォ(注音符号)は主に台湾で使用されている表音のための文字で、日本で言うひらがな・カタカナのような役割を果たしている。「ㄅ(b音)」「ㄆ(p音)」「ㄇ(m音)」「ㄈ(f音)」で始まることから、「注音符号」とは個別に愛称的につけられた(日本語で言うところの「かな」に対する「いろは」と同じような感覚)。この文字体系は日本の仮名文字などを参考に中国の古字を基にして考案され、1918年に中華民国政府により「注音字母」として公布された。台湾では小学生の漢字習得に用いられる他、PC・スマホなどでの漢字入力や、漢字のない台湾語の単語やフレーズなどを表記するのに使用される。中国大陸ではボポモフォ(注音符号)は『新華字典』などごく一部で用いられるだけで、一般的にはほとんど使わない。

ボポモフォでの表記は原則的には

  1. 「声母(子音に相当)」+「韻母(母音に相当) 」(韻母が複数の場合あり)
  2. 「声母」1字のみ(下記声母②・③)
  3. 「韻母」1字のみ
  4. 「韻母」+「韻母」

のいずれかで行われる。

漢字1文字の音(基本的に1音節に相当)は声調を除くと、「声母+介音+主母音+韻尾」に分解できる。注音符号はこの「声母」・「介音」・「主母音と韻尾」のそれぞれを1つの文字で表記できるようになっている。例えば、「香」は「ㄒ(x)一(i)ㄤ(ang)」と表記される(カッコ内はピンイン)。

ボポモフォ(注音符号)一覧

声母①

注音符号 ピンイン
b
p
m
d
t
n
l
g
k
h
j
q
x

声母②

注音符号 ピンイン
 ㄓ zhi
chi
shi
ri

声母③

注音符号 ピンイン
zi
ci
si
ri

※声母②・③についてはすでに韻母「i」の音がついており、「一」は付ける必要がない。

※声母はピンインにほぼ対応しており、そのまま置き換えればよい。

韻母①

注音符号 ピンイン
 一 i
u
ü
a
o
e
ê

※ピンインの「i」に相当する音は台湾の注音符号では「一」だが、中国大陸では「|」となる。

韻母②

注音符号 ピンイン
ai
ei
ao
ou
an
en
ang
eng
er

※韻母①・②を組み合わせて、二重母音・三重母音を作る。

声調符号

第一声 第二声 第三声 第四声 軽声
なし ˊ ˇ ˋ ˙

第一声に符号がない以外は、第二~四声まで声調符号はピンインの場合と完全に同じ。ただし、軽声の場合のみボポモフォ(注音符号)には専用の符号を用いる。なお、声調記号の位置はボポモフォ(注音符号)の右上で、これは縦書きでも横書きでも同じである。

ボポモフォ(注音符号)の書きかた

ボポモフォ(注音符号)は基本的には縦書きであるが、便宜的に横書きされる場合がある。台湾でメジャーな國語日報から出版されている『國語日報破音字典』の序文。少なくとも台湾においての中国語初等学習者むけの文章には、このようにふりがなと同じ感覚でボポモフォ(注音符号)が施されている。

私のボポモフォ学習法

私は2000年に台湾に語学留学にやって来たものの何を言っているのか分からず、「まずは中国語の語彙を身につけないと生活すらままならない」と考えて、毎日辞書とにらめっこの生活を始めた。そして、ただただ中日辞典や日中辞典をめくっているだけでは「日本語に対してまだまだ甘えが残ってしまう」と感じ、自分なりに台湾で刊行されている辞書類を色々と調べた結果、基本的には『新編國語日報辭典』という辞書で辞書引きを行うことにした。なぜ『新編國語日報辭典』にしたのかというと、この辞書がその他の辞書と比較してみて、注釈が非常に平易で分かりやすかったためである。逆に一般向け=大人向けでは若干注釈が難しく感じた。正しく把握できているではないが『新編國語日報辭典』は台湾現地では小中学生向けの辞典として編集・販売されていると思われる。

「さあ、この『新編國語日報辭典』で勉強を始めるか!」となったとき、ひとつの障害にぶつかった。それは「どうやって字を探すか」である。
留学に来たのは台湾であるし、いままであたりまえのように使っていたピンインは当時は使わなかったし、使えなかった。部首引きはできなくなかったが、引くのにものすごく時間がかかってしまい効率的ではなかった。

それでは台湾人は普段は辞書引きはどうしているか?となった際に、台湾ではボポモフォ(注音符号)で探したい漢字を探すのが通例である。日本の漢字字典でカナ引きのページがそのままボポモフォになっていると考えてよい。まるであいうえお順のように一定の法則にしたがってボポモフォが列挙されているので、それを元に探したい漢字を探すのが台湾式のやりかたである。

「では、自分もボポモフォで字引きをしてみるか」というわけで全くボポモフォについての基礎知識もないまま、『新編國語日報辭典』で字引きを始めたが、とにかく最初はどんな順序でボポモフォが並んでいるか分からず、「ㄅがbで、ㄆがなんだっけ?」という状態であった。このような状態では二進も三進もいかないやめに、思案した結果として自分でピンイン-ボポモフォ対照表を作って、それを見ながら字引きを始めた。最初は何度も何度も対照表を見ながらの字引きだったが、毎日使っているうちにだんだんとボポモフォ(注音符号)が自然に頭に入ってくるようになり、2ヶ月程度で完全に頭の中にインプットできるようになった(もちろん今でも頭の中に入っている)。

ボポモフォ学習のポイント

  • 覚え方は人によってさまざま。まずは自分がボポモフォ(注音符号)を覚える必要性と理由を明確にしよう。そして覚え方を自分なりに工夫すべし。
  • 「ひらがな」的な文字だからといって侮るなかれ。