| Q.1 | 台湾は中国なのか? |
| A.1 | 台湾には「中華民国」という国家があり、中国ではない。中国と呼ばれる中国大陸にあるのは「中華人民共和国」で、中華民国とは異なる。ただし、台湾という定義が難しいだけでなく、外省人系台湾人の一部は自身を「中国人」と呼ぶこともある。
また、夏期オリンピックやWBCなどでは中華民国ではなく英語表記の「チャイニーズ・タイペイ」とされることもあり、「チャイニーズ・タイペイ」とは「Chinese exile government in Taipei(台北に存在する中国亡命政府)」の略である。1911年に清朝が辛亥革命により倒された翌1912年に建国されたのが中華民国である。後に中華民国は日中戦争をはさみながらも中国共産党との対立と協調を繰り返し、最終的に第二次国共内戦で1949年に中国共産党に敗れた国民党政府が台湾に遷移したのが現在にまで続く姿である。 |
| Q.2 | 台湾の公用語は台湾語? |
| A.2 | 2019年に台湾において「国家言語発展法」が施行され、標準中国語・台湾語・客家語・原住民語・新住民言語(ベトナム語・インドネシア語・タイ語・ミャンマー語・カンボジア語・フィリピン語・マレーシア語)・手話が平等な国家言語と扱われるようになった。すなわち、必ずしも標準中国語が唯一の国家言語ではなくなり、中華民国の憲法上は台湾は公用語のひとつである定義になる。
1949年の国共内戦での敗退により中華民国が台湾に遷移した後、公用語は中国大陸と同じ標準中国語(北京音をベースとした北方方言)のみとされ続けた。基本的に標準中国語以外の使用は学校・政府機関・メディアではほぼ禁止状態であり、特に小学校などの公教育の場では使用した際には罰則があったとされる。 しかし、1987年の戒厳令解除後の1995年に行われた台湾初となる直接総統選挙により李登輝(1923年~2020年)が当選すると台湾全土で民主化の機運が高まり、そのひとつとしてこれまでに抑圧されていた台湾語・客家語・原住民語が公的に話されるようになる機会が徐々に増えていった。これにより台湾語・客家語・各種原住民語をその話者の子孫に話す機会を与える「郷土教育」のカリキュラムが公教育に加えられるようになり、2016年にはこれは「本土語文」と名称が変更される。 一般論として定義される台湾語とは主に本省人と呼ばれる人々によって話されている台湾ネイティブの言語である。台湾語は元々は中国の福建省で話されている閩南語系統の言語であり、台湾で独自に発達したものである。また、台湾語は近年では話せない若年層が増えているとされる(客家系も同じく客家語を話せない客家の若者が増えていると言われている)。 |
| Q.3 | 台湾人はどうやって中国語と台湾語を使い分けているのか? |
| A.3 | 台湾では公教育の場や公的機関等では標準中国語が公用語として一般的に用いられていることが多く、また出版物・標識・何らかの文字表記などでも表示される言語は繁体字の標準中国語であることが多い(ただし、これはいわゆる「台湾国語」であるとも言える余地もある)。テレビではほぼすべての番組で中国大陸同様に原則として標準中国語の字幕が施される。
台北市内では街中で台湾語聞く機会は比較的少ないとされ、本省人系の家庭内での使用が中心となっている(例えば、標準中国語での教育を受けていない高齢者とその子・孫との会話などの家族や親戚同士での場面など)。一方で、台中・台南・高雄などでは家庭以外に街中でも聞ける場面が比較的多い。いずれにせよ、標準中国語と台湾語の使い分けは個人個人や環境や状況によるところが大きく、一概に両言語を使い分ける場面を分類することは難しい。台湾語を一切理解できない外省人であったり、標準中国語しか理解できない外国人がいる場合は、標準中国語がその場で最低限通用するコミュニケーション言語をして機能する。 また、台湾語のメディアが全く存在しないというわけではなく、テレビ・ラジオなどのメディアには台湾語のものもあり、台湾語専門のチャンネルもある(同様に客家語や原住民言語のもある)。テレビなどの場合は台湾語で話されるものの、非台湾語話者でも理解できるようにこれも標準中国語の翻訳字幕が表示されることが多い。台湾語は台湾人全員が話せるというわけではないものの、本省人系の台湾人の大半は基本的には台湾語を話すことも聞きとることもでき、外省人でも一部では話すことはできないが聞き取りはできる、もしくは聞きとりも話すこともできるケースがあるとされる。客家系の人でも台湾語の環境に長期居る場合には台湾語に慣れて理解できる場合もある。 加えて、台湾では交通機関の法令や地方自治体の条例に基づき、台湾高速鉄道(高鐡)・台湾鉄路(台鐡)・台北メトロ(台北捷運)・高雄メトロ(高雄捷運)・台中メトロ(台中捷運)・桃園メトロ(桃園機場捷運)では車内アナウンスに中国語・台湾語・客家語・英語が使用されている。加えて、高雄メトロでは一部駅で日本語、台中メトロと桃園メトロでは日本語・韓国語のアナウンスも放送される。 |
| Q.4 | 台湾の漢字はなぜ中国と違うの? |
| A.4 | 中国では識字率向上を目的として簡略化された漢字「簡体字」を使っているが、台湾では簡体字を使うことはなく、日本で戦前使用されていた旧字体とほぼ同じである「繁体字」を使用しているためである。同様に香港・マカオ(澳門)でも現在中国領であるとはいえ、繁体字を常用している。
香港もマカオも元々はそれぞれ西欧の植民地であり(香港=イギリス、マカオ=ポルトガル)、中国大陸の漢字の簡体字化政策の影響を受けることもなく、従来の繁体字を使い続けることができたためである。これゆえに台湾・香港・マカオの繁体字圏では共通の単語を用いることが多く、それは時として中国大陸と異なるケースがある。特に第二次世界大戦以降の外来語の音訳語や世界的に広く用いられるようになった新語などは台湾・香港・マカオで共通していることが多い。 |
| Q.5 | 台湾の中国語と中国の中国語の違いはどれくらい? |
| A.5 | 単語の言い回しが若干異なる、理解できる程度のわずかな文法的な違いがある、特定の漢字音が別の音に変化する、といった特異点あるが、決定的な文法的差異や基礎語彙の違いがないために基本的には両者の意思疎通は問題なく行える。 |
| Q.6 | 台湾では中国語を何と呼ぶの? |
| A.6 | 一般的には「國語」「中文」というように呼び、台湾独特の中国のニュアンスとなると「台灣國語」というような名称が与えられる。中国大陸で用いられる「漢語」「普通語」といった名称は一般的ではないものの、中国大陸特有の語として認識されているため一応は通じる。反対に中国大陸でも「國語」は通じ、中国大陸南方では用いることが多い。「華語」「中文」は中国大陸・台湾どちらでも通用する。 |
| Q.6 | ピンインって何? |
| A.6 | 簡単に言えば、漢字の読み仮名的なアルファベットのことである。中国大陸で漢字の簡体字化同様に識字率向上の為に普及が進み、現在では外国人の中国語学習にも広く使用されている。
漢字では「拼音」とつづり、正しくは「漢語拼音」と書く。「拼音」という語自体は「2つもしくはそれ以上の音素を組み合わせて複合音を作る」というような意味を示す。その特徴として、初等教育における中国語の表音をする際には第1声~第4声の声調符号をアルファベットに付加することで漢字の正しい発音と声調が分かる仕組みとなっている。ただし、国語教育の目的ではなく、単純に固有名詞や一般名詞などをピンイン表記する際には、声調符号を伴わない(例えば、中国の有名なスポーツアパレルブランドである李寧〔李宁〕は声調符号を伴わずに「Li Ning」としている)。 漢字はそれ自身が概念・意味・定義を示す効率的な表語文字ではあるものの、漢字一語一語の正しい読み方を示す手段や方法が伝統的に確立しておらず(直音法や反切といった漢字による発音表記法があったものの時代や地域により正確な発音を導き出すのが難しいという欠点があった)、1894年の日清戦争後に中国近代化の機運の中で民衆への啓蒙のひとつとして漢字に替わる様々な文字が発案された。その中で生まれたのが後述の台湾で現在用いられている注音符号(ボポモフォ)である。 その中でローマ字での発音表記として、国語ローマ字、現在台湾で用いられているウェード式(ウェード・ジャイルズ式)、1930年代にソ連領内の中国人移民のコニュニティーで使われたラテン化新文字があったが、結果的に中国大陸では1949年に中華人民共和国が樹立すると1958年には漢語拼音方案が成立し、ローマ字によるピンインが中国において唯一かつスタンダードな表音方式となった。 また、ピンインによる表音方式は1990年代後半以降の世界的なITの拡大により、中国人だけでなく、中国語を理解している外国人にも中国語を入力する有効な手段としても用いられるようになった。Windowsの場合、Window95・Windows98(98SE含む)・WindowsMeなどでは簡体字にのみピンイン入力が可能であったが、WindowsNTやそれに続くWindows20000・WindowXP・WindowsVista・Windows7・Windows8・Windows10・Windows11では「繁体字中国語」として繁体字の入力手段としてピンインも使えるようになった(ただし、WindowsNTの場合はすべてが標準装備であったわけではなく、言語のバージョンにより標準装備のものもあれば、設定の変更や専用のIME追加によりピンイン入力が可能であった)。 |
| Q.7 | 台湾ではピンインは使うの? |
| A.7 | 従来台湾ではアルファベットによる発音表記といえばウェード式(ウェード・ジャイルズ式)が一般的であり、ピンインはほとんど用いられることはなかったが(ピンインは主に90年代後半~2000年代に在台外国人が中国語教育の場で使うのが一般的であった)、国民党の馬英久(1950年~)政権下の2009年1月1日に公式にピンインの公的な使用を適用することになった。
ただし、台北(Taipei)や高雄(Kaohsiung)のようなウェード式による地名表記や、基隆(Keelung)のような非北京語発音を元にした表記など、国際的に定着しているものについてはピンイン表記に切り替えず、ウェード式のままである。ピンインの代わりに、ひらがな的位置づけとして注音符号(通称「ボポモフォ」)があり、PCやスマートホンなどでの漢字入力はこの注音符号を用いるのが台湾では一般的である。 初等教育でも従来どおり注音符号を用いるのが一般的であり、一部地域で地名がピンイン表記になりつつあるも日常的に台湾人がピンインを用いることは非常に少ない。ただし、台湾人はピンインを見て発音を全く分からないというわけではなく、そのつづりから大体の発音は推測できるようである。特に外国人と接する機会の多いビジネスマンやローマ字に慣れ親しんだ若年層ではピンインを理解しており、ウェード式との使い分けができるようである。 この他、台湾における外国人への中国語教育の場では、テキストにはピンインが併記されていることが多く、注音符号も記載されていることもあるが、やはりピンインのほうが主流である。 |
