中国語と英語はそれぞれ個別の言語系統に属しながらも、孤立語的要素が他の言語と比べて強い。その根拠として

  • 日本語・朝鮮語・モンゴル語・トルコ語といった膠着語のように接頭辞や接尾語を単語に付着することで単語の文中での文法関係を示すさない。
  • フランス語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語に代表される屈折語のように文法的性と文法的数の概念がない。
  • ロシア語・ドイツ語のように格変化がない。

といったことが挙げられる。厳密に言うと、中国語は本来は膠着語と屈折語の要素を含んでいたが、時間の流れとともに段々とそれらが失われていき、孤立語となっていったが、介詞(在・向・給・和・跟など)や接辞(子・兒・頭・老・了・過など)を含むことで膠着語的性質に向かいつつある。一方で英語は元々動詞の活用・格変化・性数変化といった屈折語的な要素があったが、それら特徴が次第になくなっていき、孤立語的かつ膠着語的な性格が強くなっている。

類似点

語順が基本的にS+V+O

中国語・英語ともに共通して基本的には語順はSVO形である。この語順は基本的な大原則であり、ロマンス諸語などと比較して、中国語も英語も文法上SVO形が通常の平叙文であり、それは原則としてOVS形やOSV形を想定した文構造ではない。ただし、英語と比べると中国語では、O〔目的語〕を強調する場合にはOSVという形はありうる。

〇He studies science earnestly.
〇He earnestly studies science.
〇他認真地學習科學。
×他學習科學認真地。
科學他認真地學習。
×科學他學習認真地。

中国語では例外的に多用される文型として補語や目的語を取るSOV形があり、基本的にはSVO形とは意味は大きく変わらない。中国語は伝統的にSVO形ではあったが、歴史的にSOV形である元朝のモンゴル語(モンゴル語族)や清朝の満洲語(ツングース語族)などの影響をかつて受けた背景もあって、本来の中国語ではあり得なかったSOV形が存在している。一方で現代英語は語順にかなり厳格であり、ほぼSVO形しか認められないような文法となっている。とはいえ、450年~1150年頃にイングランドで使われていた古英語では現在のロマンス諸語のように語順が比較的自由だったとされ、SOV形が許容されていただけでなく、OSV形・VOS形・OVS形・VSO系も存在していた。

〇I go to Shanghai.
〇我去上海。
〇我到上海去。

〇I drink up all the apple juice.
〇我喝光蘋果汁。
〇我把蘋果汁喝光。

ただし、動詞を修飾する副詞および副詞節の位置については異なる。英語では副詞は文中での置く位置を比較的フレキシブルに決めることができるが(場所や時間を示す副詞節は基本的に文末もしくは文頭)、中国語では原則として副詞・副詞節ともに動詞の前に置かなければならない。

〇She cooks at the kitchen.
〇At the kitchen, she cooks.
〇她在廚房做菜。
△在廚房、她做菜。
△她做菜在廚房。(この語順だと、「彼女が料理をするのは台所である」というニュアンスが強い)

〇He reads a book in that library.
×He in that library reads a book.
〇他在那圖書館看書。
△他看書在那圖書館。(この語順だと、「彼が本を読むのは図書館である」というニュアンスが強い)

〇That girl gets up at 7 o’clock every morning.
×That girl at 7 o’clock every morning gets up.
〇那個女孩子每天早上在七點起床。
△那個女孩子每天早上在七點起床。(この語順だと、「あの女の子が起床するのは毎朝7時である」というニュアンスが強い)

また、英語には「There is (are)」のthere構文に代表されるような「there+V+O」で構成される存在文があり(SVの第一文型と同じ)、

「テーブルの上に1冊の本がある」
〇There is a book on the table.
〇桌子上有一本書。
〇一本書在桌子上。

というようになる。中国語では主語が「テーブル」か「本」かの違いによって同じ文脈を示せる。ただし、英語はthere構文では「there is my book on the table」「There is the book on the table 」のように定冠詞や人称名詞所有格で示す限定詞が伴う場合には正しい文法とは言えないが、中国語では限定詞が伴われていても問題はない。

主語が省略できない

中国語・英語ともに日本語やフランス語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語に代表されるロマンス語とは異なり、主語を省略できない。フランス語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語は動詞が主語の人称によって変化するという性質上、主語を省略しても動詞の活用から主語が誰かを類推することができるためである。

〇You watch the TV program.
〇你看那個電視節目。
△Watch the TV program.(この場合は命令形となり、主語がYouである上記の英文とは同じとは言えない)
△看那個電視節目。(英語同様に命令形となってしまい、主語が你である上記の中国語の文と同じとは言えない)

命令形が動詞の原形

中国語も英語も命令形が、基本的に動詞の原形のみ、もしくは動詞の原形に副詞や前置詞など(中国語では方向補語)を付加した形となる。ただし、中国語では動詞単体で命令形にするよりは、副詞や方向補語を伴う、もしく目的語を付加することで動詞により具体性を帯びさせることが多い。中国語の動詞は単音=漢字1文字もしくは二音節=漢字2文字がほとんどだが、動詞1文字ないしは2文字だけの命令形では文語的な印象が強い。

〇Look at the picture.
〇看看那張畫兒。
〇看一下那張兒 。
〇看那張畫兒。(上記中国語の文2例と比較して、聞き手に対してやや口調が強めの印象を与える)
〇你看、那張畫兒。

文法的性がない

印欧語に見られる名詞の男性名詞・女性名詞・中性名詞といった文法的性(gender)の概念が存在せず、名詞とその関連語(多くは形容詞)の変化する現象(「性の一致」)が中国語にも英語にも存在しない。性については、三人称で「他」「她」を使い、二人称で台湾などで女性に対して「妳」を使う、など文字上で使い分けることがあるのみで中国語には基本的にはその概念がないと言って差し支えない。「他」「她」はいずれも「tā」と発音し、「你」「妳」はいずれも「nǐ」と発音しているため、中国語は文法的性を意識した言語とは言いきれない。

〇white moutain
〇白色的山
〇白山
※スペイン語では「montaña blanca」というように「montaña(山)」が女性名詞であるために、「山」を修飾する形容詞「白い」も女性系の「blanca」となる。反対に名詞が「libro(本)」のように男性名詞であれば、これを修飾する形容詞「白い」は男性系の「blanco」となる

文法的数がない

文法的性と同様に単数・複数により、名詞にかかる形容詞になんら影響を与えない。

〇my tall friends
〇我的高個子朋友們(もしくは我的高個子朋友)。
※スペイン語では「mis amigos altos」(男性の友人)もしくは「mis amigas altas」(女性の友人)となり、もし単数であれば「mi amigo alto」もしくは「mi amiga alta」となる。

ただし、形容詞で修飾された名詞が主語となる場合は中国語では単数・複数による違いはないものの、英語の場合は主語が単数・複数かで動詞の活用も変化する。同様にスペイン語でも動詞の活用が変わる。一方で名詞が単数か複数かについては、中国語と英語では取り扱い方が異なるので注意が必要である。

形容詞は必ず修飾する名詞の前に置く

中国語・英語ともに形容詞と修飾される名詞の語順は必ず「形容詞+名詞」となり、スペイン語に代表されるような「名詞+形容詞」という形にはならない。

〇small boy
〇小男孩子
※スペイン語ではniño pequeño(複数形ではniños pequeños)となる。

ただし、古代中国語では「帝舜」「后羿」「婦好」のように被修飾語+修飾語の構造があったとされ、現在の中国語ではそのような語順はない。現代の広東語において被修飾語+修飾語となる名詞+形容詞の例もある(もちろん、形容詞+名詞と修飾成分が前置するのが通常)。

広東語 北京語 意味
椰青(je4 ceng1) 青椰(qīng yē) ヤングココナッツ
雞公(gai1 gung1) 公雞(gōng jī) オスの鶏、おんどり
豆腐潤(dau6 fu6 jeon6-2) 潤豆腐(rùn dòufu) 豆腐の一種、豆膶とも呼ぶ。ただし中国や台湾では一般的に「豆腐乾(dòufu gān)」。
晨早(san4 zou2) 早晨(zǎochén) 早朝
人客(jan4 haak3) 客人(kèrén) 客、ゲスト

孤立語である、もしくは孤立語的要素が強い

膠着語(日本語・朝鮮語・トルコ語・フィンランド語・ハンガリー語)や屈折語(ラテン語・古典ギリシア語・ドイツ語・ロシア語・アラビア語)という言語類型に対して、中国語は孤立語として扱われる。
孤立語は1語が1形態素(意味)に対応する言語であり、時制・格・文法的数によって語形が変化することなく、主語・目的語の区別は語順によって文意が示される。孤立語にはこの他にベトナム語・タイ語・クメール語・ラオス語などがある。

一方で、英語は元々はドイツ語・フランス語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語・ロシア語同様に屈折語と定義される印欧語に属するものの、法(直接法=現実世界の事実を述べる、命令法=命令・要求を述べる、仮定法=仮定を述べる、可能法=可能なことを述べる、希求法=願望・希望の述べる、など話し手の心的状態を示す)は法助動詞(shall、should、can、could、will、would、must、may、might、need、dare)によって表すことができ、主語と目的語の違いは語順で示されるなど孤立語的な要素があり、かつ動詞の屈折語尾がほとんど失われているほか(三人称現在形の動詞語尾に「-s」がつくのみ)、前置詞で格を表わしたりと膠着語的な性格も有している。

格変化がない

語形を変えることによって、ひとつの動作における動作主と対象の関係性(主語と目的語・補語)や、場所・所有を示す文法的機能を格と呼び、格が必要に応じて形を変えることを格変化と呼ぶ。

例えば、日本語の「私は公園で私の犬にボールを投げる」といった文では、
「私は」⇒ 「私+は」(動作主を示す主語、主格)
「公園で」⇒ 「公園+で」(場所を示す補語、処格)
「私の」⇒ 「私+の」(所有を示す、属格)
「犬に」⇒ 「犬+に」(動作の対象を示す補語、与格)
「ボールを」⇒ 「ボール+を」(動作の対象を示す目的語、対格)
というように助詞を使い分けて格変化を機能させることによって、文脈での意味関係を示すことができる。

上記の例文は英語と中国語では以下のようになる。
〇I throw a ball to my dog at the park.
〇我在公園裡把一個球投給我的狗。

英語においては「I」や「my」などの人称代名詞の変化で代名詞の文における役割を明示するほか、前置詞「to」「at」を用いることによって動作の対象や動作が行われる場所を示すことができる。ロマンス諸語ではその祖語となったラテン語と比較すると格変化が消失していった一方で、英語と同じゲルマン語派に属するドイツ語や同じく印欧語のスラブ語派のロシア語では格変化が依然存在している。

ただし、古代中国語にも格があったとされ、一人称であれば主格(I)や属格(my)は「我」、与格や対格は「吾」というように厳密な使い分けは存在していたとされる。同様に二人称では主格(you)と属格(your)は「汝」で、与格と対格は「爾」であったという。現代中国語および中国の各方言ではこのような機能はすでに失われているが、客家語や湘語には残っている。

相違点

品詞の区分

英語には以下10種類の品詞が存在する。

品詞の種類 英語の名称 単語例
名詞 noun dog / cat / train / school / river / sky / democracy
代名詞 pronoun I / you / he / she /they / it
動詞 verb go / study
形容詞 adjective good / white / beautiful / right
副詞 adverb quickly / strictly / fortunately
助動詞 auxiliary verb can / may / should / will / shall / must
前置詞 preposition in / at / on / to / for
間投詞 interjection hi / yeah / well / oh / good morning
接続詞 conjunction and / or / while

一方で中国語においては品詞の概念が非常に希薄であり、音節単位(≒1つの漢字)の文中での置く場所や語順によってその機能を明示する。中国語では品詞は最小単位が単語(=「詞」)であり、これは独立して運用できるものである。意味と働きに応じて、「実詞」と「虚詞」に分けることができる。実詞とは事物・動作・性質など実際の意味を持った単語であり、名詞・動詞・形容詞などが含まれる。虚詞は実際の意味を持たず、様々な文法関係を表すもので、助詞・介詞・連詞・擬音語・感嘆詞などが含まれる。さらに実詞の下位区分として、体詞と述詞(謂詞)がある。日本語で言うと、体詞は体言に、述詞は用言に相当する。体詞には名詞・代名詞・数量詞があり、述詞には動詞・形容詞がある。体詞・述詞どちらにも属すとも考えにくい副詞がある。




実詞
体詞 名詞 狗、汽車、太陽、山脈、國家
代詞 人称代詞 我、你、他、她、它、我們、你們、他們
指示代詞 這、那、這兒、這裡、那兒、那裡
疑問代詞 誰、什麼、怎麼、哪、哪裡、哪兒
数詞 基数 一、兩、三、百、千、万
序数 二、第一、初次、末代
量詞 名量詞 一個(手錶)、兩位(老師)、三本(書)
動量詞 一步、兩次、三場、四趟
述詞 動詞 看、學、喜歡、溝通、結婚、睡覺
能願動詞(助動詞) 要、可以、會、應、該能
形容詞 熱、涼快、便宜、貴、漂亮
副詞

肯定否定副詞 不、没、一定、别、不必、必须
時間副詞 剛剛、已經、正在、總是、一直
範囲副詞 都、一共、一起、只、僅
程度副詞 很、非常、太、比較、特別
頻率副詞 再、又、還、也、經常
語気副词 才、幸虧、居然、到底、也許、反正
情態副詞 依然、互相、親自、仍然
補語
方向補語 (跑)出去
結果補語 (寫)完了
虚詞



助詞 動態助詞 了、過、著
語気助詞 嗎、呢、吧、了、的、嘛
構造助詞 的、地、得
介詞(前置詞) 給、跟、被、按、從、離、在、向、關於
連詞(接続詞) 但是、因為、雖然、還是、或者
象声詞(擬音語) 哈哈、呱呱、汪汪、嘎嘎、轟隆
感嘆詞 哎、呀、嗯、噢
接尾辞 兒、子、頭、件、們、者、化、么
補語
可能補語 (看)得懂
程度補語 (笑)得很開心

他在公園。
彼は公園にいる。⇒ 所在を示す動詞の「在zài」

他在公園打羽毛球。
彼は公園でバドミントンをする。⇒ 動作を行う場所を示すのに用いる介詞の「在zài」

他在聽著音樂。
彼は音楽を聴いている。⇒ 現在進行を示す副詞の「在zài」

時制の厳密さ

英語では時制は大きく過去形・現在形・未来形と3種類に分類され、時制に合わせて動詞を活用する必要がある。ロマンス諸語はじめ印欧語ではこれが更に複雑化し、人称に合わせてさらに細分化された動詞の活用を適切に使い分けなければならない。一方で中国語では時制の観念がやや稀薄であり、時間を示す副詞や副詞句を用いることでどの時点の出来事を示す文法構造になっている。

〔過去形〕
〇I watched a movie yesterday.
〇我昨天看電影。
〇我昨天看了電影。
〇我昨天看了電影了。

〇I was watching a movie yesterday.
〇我昨天在看電影。
⇒過去進行形で「~していた」というニュアンスになる)

〇I watched a movie yesterday.
〇我昨天看過電影。
〇我昨天看過了電影。
〇我昨天看過了電影了。
⇒「過」は現在完了形や過去完了形を示すものであるが、単純に過去形としても使用できる。

〔現在形〕
〇I watch a movie.
〇我現在看電影。

〇I am watching a movie now.
〇我現在正在看電影。
〇我現在在看電影。
〇我現在看著電影。
〇我現在正在看著電影。
〇我現在在看著電影。
⇒「正在」「在」「著」を用いることによって現在進行形を示すことができる。 

〔未来形〕
〇I will watch a movie.
〇I am going to watch a movie.
〇I plan to watch a movie.
〇我明天看電影。
〇我明天會看電影。
〇我明天要看電影。
〇我明天準備看電影。
〇我明天打算看電影。

自動詞・他動詞の区分

中国語では動詞は日本語動詞のように「~る」(もしくは「~する」)のような語尾で終わることがないことから意味と機能によって動詞か否かを識別することが求められる。

また、中国語では目的語が取れるかどうかで、動詞を「及物動詞」や「不及物動詞」の二種類に大きく分けることができる。「及物動詞」では目的語を取ることができ、「不及物動詞」ではそれができない。日本語の「始まる」と「始める」や、「壊れる」や「壊す」というような自動詞や他動詞の明確な区分が中国にはないために、「比賽開始」「開始比賽」や、「集合學生」「學生集合」のように語順による位置で動詞の機能を区別する。

英語では動詞は目的語を伴わない自動詞(intransitive verb)と目的語を伴って主語から目的語への動作や影響を示す他動詞(transitive verb)の二種類に二分できる。これに対して中国語では動詞を英語のように自動詞と他動詞と単純に区別することが難しい。
例えば、「6人の女性が来た」という文であれば、

〇六個女生來了。
〇來了六個女生。

というような文章を作ることが可能である。前者は主語が目的語を取らない自動詞と受け取れるが、後者は一見すると他動詞+目的語という構造とも解釈できるものの、両者は全く同じ意味であるために「來」は自動ではないとは言いきれなくなり、一概にひとつの動詞が自動詞・他動詞と安直に割り切れないケースが存在する。

同様に「下雨」という語についても、構造的に他動詞+目的語とも取れなくないが、「雨」を主語とした主語+自動詞とも言える。この他、そもそも本来あるべき「天」という語が省略されているのではという解釈もあり、「天下雨」という語形であれば、主語+他動詞+目的語という構造であるとも言える一方で、この文形は補語+自動詞+主語とも解釈可能である

動詞の活用

英語では動詞は人称名詞・時制に応じて動詞を活用する必要がある。少なくとも1人称・2人称・3人称で時制に応じて動詞を適切に使い分けなければならない。一方で中国語では人称名詞がどの形であっても動詞が活用することはない。上記の通り、むしろ時間を示す補語があることによって、原形のままでも認められる。

〇I live in New York.
〇You live in New York.
〇He lives in New York.
〇They live in New York.
〇我住在紐約。
〇你住在紐約。
〇他住在紐約。
〇他們住在紐約。

名詞の単数・複数の区別

英語では他の印欧語同様に名詞が単数か複数かが非常に重要である。動詞は単数であれば3人称にしなければならず、複数であれば2人称にしなければならない。スペイン語などのロマンス語ではさらに形容詞や冠詞も単数・複数に応じて変化させなければならない。中国語においては、確かに1つか2つ以上かというのは重要な指標のひとつであるが、複数であればその数量を加えるのみで、文全体の構成を変えるほどの大きな要素ではない。

例えば、「私は茶色い犬を飼っている」という文であれば、以下のような言い方が可能である。

△I have brown dog in my house.
〇I have a brown dog in my house.
※後者のほうが「〇匹の」ということでより具体的になり、文としてもより適切な形になる。前者のような言い方は基本的にはしない。

〇我家有棕色的狗。
〇我家有一隻棕色的狗(我家有一條棕色的狗)。
※どちらでも通じるが、後者のほうがより具体的である(ただし、犬の数を加えることは必須ではない)。

スペイン語では
Mi casa tiene uma perro marrón en mi casa.
もしくは
Yo tengo un perro marrón en mi casa.
という表現となる。

また、この表現において、犬が主語となり、かつ複数となった(主語が複数となった)場合には以下のように変化する。

〇The three brown dogs live in my house.
〇三隻棕色的狗住在我家。

スペイン語では
Los tres perros marrones viven en mi casa.
となり、犬が複数(3匹)の「perros」になったことで、定冠詞が男性形複数の「Los(単数形はEl)」に、形容詞が男性形複数の「marrones」に、動詞が3人称現在の「viven」に変化する。

可算名詞・不可算名詞の区別

英語では名詞の分類におけるひとつの指標として、その名詞が数えられるかどうかという基準がある。例えば、定まった形がない液体や細かすぎて数えられない粉末(water、beer、sugar、rice)、抽象的な概念や質の名前(air、gas、anger、beauty)などは不可算名詞として、「数えられないもの」として扱う。よって、それらは数量を数える必要があるときには、「a glass of」「a bottle of」のように正確な測定値、もしくは「much」「some」「a lot of」「a bit of」「a great deal of」のような語を用いて程度や量の多い・少ないを示す。

中国語ではそもそも可算名詞と不可算名詞の定義がなく、名詞は名詞でしかない。後述のように日本語の助数詞と同等の機能を持つ量詞を添えることによって、名詞の具体的な数量や程度を示すことが可能である。また、不可算名詞は英語では単独で使用することはは好まれないが(液体であれば「a glass of」や「a bottle of」のような語を語頭に置くことが望ましい)、中国語では特に何もつけずに英語で不可算名詞の語をそのまま使用することができる。

△I drink water.
〇I drink a glass of water.
〇我喝水
〇我喝一杯水

疑問文の文型

英語では疑問形の形として、いわゆる5W1H(What、Who、When、Where、Why )の疑問詞を伴うものであっても、伴わない形であっても、do / does / did(もしくはbe動詞や助動詞)+主語+動詞(もしくはbe動詞)の語順が基本的な形となる。

中国語では疑問文の形として、

  1. 平叙文の文末に「嗎」を置く。
  2. 「不」を間にはさんで「是」や動詞を繰り返す。
  3. 疑問の対象となる語をそのまま疑問詞に置き換える。

の3種類が存在する。

Are you Japanese?
你是日本人嗎?

Do you like Summer?
你喜歡夏天嗎?

Is she an university student?
他是不是大學生 ?

Does he go to that station?
他去不去那火車站?

What do you eat at that restaurant?
你在那個餐廳吃什麼?

Who is that man?
誰是那位男生?

Who read that book?
誰看那本書?

When do you go home?
你什麼時候回家?

Where do you live?
你住在哪裡?

Why does he work on Sunday?
你為什麼在星期日工作?

How much is this newspaper?
這報紙多少錢?

How many people live in this dormitory?
幾個人(多少人)住在這個宿舍?

量詞の有無

中国では日本語の助数詞のように数量と名詞の間に量詞を置くことによりどのような事柄の数量であるかを明示することができる。英語の可算名詞・不可算名詞のように名詞の性質によって数えられる・数えられないといった区分はなく、英語で不可算名詞と見做される物質であっても量詞を加えることによって可算名詞と同等の扱いになる。また、量詞は「次」「趟」といったものもあり、回数を示して動詞を修飾するものは「動量詞」と呼ぶこともある。

I drink a cup of coffee.
我喝一杯咖啡。

I have a cat in my house.
我家有一隻貓。

冠詞の有無

英語では「a」や「an」のような不定冠詞、「the」のような定冠詞が存在するが、中国語にはそのような概念はない。特定の事柄を示すときには、「這」「那」といった指示代名詞を用いて名詞を修飾する。例外的に、広東語や閩南語の下位方言である潮州語では「一台の車」は「一架車」と表現するが、「架車」とすることで話し手が特定の車を指す。

I bought a book. After I finished reading, I lent the book to her.
我買了一本書。我看完之後、我借給她那本書。