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文語体がはっきりしている
中国大陸と比べて、台湾の中国語では文章のことばは比較的「いかにも文章語」らしいお堅い感じの印象がある。とはいえ、すべての文章が堅苦しいというわけではなく、特に契約文や公的文書などにはそのような傾向が顕著である。とはいえ、小学校低学年などの初等教育での中国語の教科書では概ね口語体に近い文体である。反対に中国大陸では、1949年の中華人民共和国建国以降の中国語に関する政策では文言一致の原則から口語体を文章で用いることを法的に定めており、教育・放送・公文章・公共サービスなど広範囲な分野での普通話=簡体字+口語体の使用を義務付けている。
禁止を示す助動詞「別(bié)」の使用頻度が低い
中国語学習者が必ず学ぶ内容のひとつとして禁止の「別」があるが、台湾の中国語ではこの「別(ㄅㄧㄝˊ:bié)」は通じなくはないがあまり常用しない。 通常は「不要(ㄅㄨˊ ㄧㄠˋ:búyào)」を用いる。台湾の文章語では「勿」となり、この丁寧な言い方として「請勿」というように表現する。
なお、「別」は「不要」の短縮形とされ、「不要」に似た言い回しで「不用(ㄅㄨˊ ㄩㄥˋ:búyòng)」というのがあり、こちらのほうが語気を荒げない丁寧な言い回しの印象がある。
この他、中国大陸では「不要」と「別」に似た副詞に「甭(béng)」というのもあり、「~する必要はない」「~してはいけない」という意味であるが、こちらも台湾ではほとんど使われることはない。
文章語で「地(de)」が「的」、「得(de)」が「的」と表記される
中国大陸で「他們高興地吃了蛋糕(彼らは喜んでケーキを食べた)」という表現が台湾では「他們高興的吃了蛋糕」となる他、中国大陸で「他講得太快(彼は喋るのが早い)」が台湾では「他講的太快」となり、台湾においては中国大陸での「地」と「得」の表現がそれぞれ「的」と表記されることがある。「地」「得」と表記される場合もあるものの、中国大陸ほど用法が一貫しているわけではなく、発話者(文章主)によって使い方はまちまちである。逆に言えば、中国大陸の中国語では副詞的用法の「地」と程度補語・様態補語の「得」それぞれの字を明確に定義づけているということになる。ちなみに所有を示す「的(ㄉㄜ˙:de)」」は台湾でごくまれに「底」と表記される場合もあるが、比較的古風な表現であり、50年以上前の書籍などで見かける以外に日常生活で見かけることはめったにない。
文章語で文章中で「他」「她」「它」「牠」の使い分けが時々曖昧になる
すべて発音が「ㄊㄚ (tā)」であり、三人称の代名詞であり、それぞれ「彼」「彼女」「(物や植物などの)それ」「(動物の)それ」を意味する。話し言葉ではすべて「tā」 となってしまうこともあり、「他」「她」の混用を時々見かける。ここに「它」「牠」が加わって、正確に四者を区別していない場合もある(このせいか中国語を母語とする話者は英語を話す際に「he」と「she」を混同することが多いとも言われている)。
中国語では元々「他」一字で三人称の名詞すべてを意味していたとされ、近代以降にそれぞれに字を当てて概念を区分するようになったとされる。神の三人称代名詞に「祂」というのもあるが、基本的に「他」「她」「它」が常用され、「牠」と「祂」の使用頻度は前三者と比べて低い。中国大陸も基本的に同様の概念および用字ではあるものの、台湾よりは「他」「她」をより明確に・厳密に使い分けている印象がある。
「你」と「妳」がある
どちらも「あなた」を指す二人称の名詞でどちらも「ㄋㄧˇ:nǐ」と発音され、女性の「あなた」を示す場合に後者を用いることがある。とはいえ、当然男女ともに前者のほうで事足りるので使用頻度は圧倒的に「你」が多く、「妳」は文章やテレビや映画などの字幕で時々見かける程度です。中国大陸では基本的に「你」を常用し、「妳」はあまり使用しない。
「咱們」をあまり使わない
台湾では「私たち」を示す「咱們」をあまり使わず、「我們」を使うのが一般的である。中国大陸の北方地域では「咱們」と「我們」の明確な区別があるとされ、前者は聞き手を含む「我々」(「他們」と相対する概念)で、後者は聞き手を含まない「我々」(「你們」と相対する概念)であると定義づけられている。